聖母月

 日本では5月はすでに初夏の雰囲気ですが、より北方のヨーロッパでは春は5月とともに訪れます。さまざまな花が咲き乱れるその5月に、「救いの春」であるマリアへの信心業がカトリック信者のあいだで行われてきました。聖堂では花などで美しく飾られたマリアの聖像や聖画の前で、聖書の朗読や説教、聖歌や祈りが捧げられ、家庭でも小さな祭壇にマリアの御像や御絵が飾られ、ロザリオの祈りなどが捧げられてきました。

 上の画像は、中世の上ライン地方の画家による「小楽園—天国で聖人を総べられる聖母マリア」です。庭の18種類の植物には、象徴的な意味が込められています(たとえば、ヒナギクは純潔、サクランボは天国の喜び、アイリスは天の元后、タチアオイは癒しなど)。

 逆に、多くの植物が聖母マリアにちなんで呼ばれてきました(たとえば、スズランは聖母の涙、スペアミントは聖マリアのハーブ、プリムラは聖母の鍵など)。

 第二バチカン公会議後の典礼では、マリアは特に待降節に記念されます(教皇パウロ6世『使徒的勧告マリアーリス・クルトゥス―聖母マリアへの信心』第一節4参照)。ただ、ヨーロッパの古い信者たちが「イエスへの道」であるマリアの姿を身近な植物に見たように、私たちも日々の生活の中でイエスの道を見つけていきたいものです。

 

*参考:グラディス・テイラー『聖人と花』(八坂書房)