ド・レペ神父

手話版はこちら

 「言葉」と言うと、聞いたり話したりする言葉をふつう思い浮かべますが、それだけが言葉ではないようです。人間はたとえ耳が聞こえず声を出すことができなかったとしても、身ぶり手振りで互いに意思疎通を図ろうとするのです。言葉はそれほど人間の本性に根ざしていると言えるのかもしれません。

 キリスト教は言葉を大切にします。耳の聞こえない二人の子どもの姉妹が身ぶり手振りで互いに意思疎通をとっていることに気づき、それによってろう者を教育しようとしたのが一人のカトリック神父だったのも偶然ではなかったかもしれません。シャルル・ミシェル・ド・レペ(1712―1789)は当時ジャンセニストとして不利な状況にありながら、二人の姉妹の身ぶり手振りを手話に発展させ、1760年に史上初の聾唖学校を始めました。

 2006年の国連総会で、手話は言語であると定義した国連障害者権利条約が採択されました。ド・レペ神父の始めたことに思いを馳せたいです。