おとめマリアへの祈り

神の御母よ(Sub tuum praesidium)

 マリア様への祈りのうち、もっとも古い祈りです。

ピエロ・デッラ・フランチェスカ「憐みの聖母」、1445-62年、サンセポルクロ市立美術館所蔵
ピエロ・デッラ・フランチェスカ「憐みの聖母」、1445-62年、サンセポルクロ市立美術館所蔵

神の御母よ

わたしたちはご保護を仰ぎます。

いつ、どこでも

私たちの祈りを聞き入れ

御(おん)助けをもって

すべての危険から守ってください。

 

(カルメル会編『カトリック祈祷書—祈りの友』)


Sub tuum praesidium confugimus,

Sancta Dei Genetrix.

Nostras deprecationes ne despicias

in necessitatibus nostris,

sed a periculis cunctis

libera nos semper,

Virgo gloriosa et benedicta.


マリアの歌(Magnificat)

 マリアの歌(Magnificat)は「教会の祈り(聖務日課)」の晩の祈りで福音の歌として歌われます。聖霊を受けて身ごもったマリアが親戚のエリサベトを訪問し、エリサベトがマリアをたたえたのに答えて、歌った歌です(ルカ1・46-55)。

わたしは神をあがめ、

わたしの心は神の救いによろこびおどる。

 

神は卑しいはしためを顧みられ、

いつの代の人もわたしを幸せな者と呼ぶ。

 

神はわたしに偉大なわざを行われた。

その名は尊く、

あわれみは代々、神を畏れ敬う人の上に。

 

神はその力を表し、

思い上がる者を打ち砕き、

権力をふるう者をその座から下ろし、

見捨てられた人を高められる。

飢えに苦しむ人はよいもので満たされ、

おごり暮らす者はむなしくなって帰る。

 神はいつくしみを忘れることなく、

しもべイスラエルを助けられた。

わたしたちの祖先、

アブラハムとその子孫に約束されたように。

Magnificat anima mea Dominum,

et exsultavit spiritus meus in Deo salvatore meo,

quia respexit humilitatem ancillae suae.

Ecce enim ex hoc beatam me dicent omnes generationes,

quia fecit mihi magna, qui potens est,

et sanctum nomen eius,

et misericordia eius in progenies et progenies

timentibus eum.

Fecit potentiam in brachio suo,

dispersit superbos mente cordis sui;

deposuit potentes de sede

et exaltavit humiles;

esurientes implevit bonis

et divites dimisit inanes.

Suscepit Israel puerum suum,

recordatus misericordiae,

sicut locutus est ad patres nostros,

Abraham et semini eius in saecula.


おお交唱(”O” antiphona)

マリアの歌の初めと終わりには短文の交唱が歌われますが、主の降誕直前の週である12月17日から23日までは、「おお"O"」という感嘆詞で始まる「おお交唱(“O” antiphona)」が歌われます。詳しくはカトリック中央協議会の該当ページをご覧ください。

17日

おお、

すべてを越える神から出た英知よ。

あなたは果てから果てまで、

すべてを力強くやさしく整えられる。

賢明の道を教えに来てください。

O Sapientia,

quae ex ore Altissimi prodiisti,

attingens a fine usque ad finem,

fortiter suaviterque disponens omnia:

veni ad docendum nos viam prudentiae.



18日

おお、

イスラエルの指導者である主よ、

あなたはやぶの火の中でモーセに現れ、

 

シナイでおきてをお与えになった。

力をふるい、わたしたちをあがないに来てください。

O Adonai,

et dux domus Israël,

qui Moyse in igne flammae rubi apparuisti,

et ei in Sina legem dedisti:

veni ad redimendum nos in brachio extento.



19日

おお、

民の旗印として立ったエッサイの切株、

あなたによって諸国の王は鳴りをひそめ、民はあなたに願い求める。

時を早め、

わたしたちを救いに来てください。

O Radix Jesse,

qui stas in signum populorum,

super quem continebunt reges os suum,

quem gentes deprecabuntur:

veni ad liberandum nos,

jam noli tardare.



20日

おお、ダビデのかぎ、

イスラエルの家の王しゃく、

あなたが開けば閉じる者はなく、

あなたが閉じれば開く者はない。

とらわれ人のくさりをたち、

やみと死の陰にすわる人を

救い出しに来てください。

O Clavis David,

et sceptrum domus Israël,

qui aperis, et nemo claudit,

claudis, et nemo aperuit:

veni, et educ vinctum

de domo carceris,

sedentem in tenebris,

et umbra mortis.



21日

おお、さしのぼる朝日、

永遠の光の輝き、

あなたは正義の太陽。

日のあたらない陰に生き、

やみにうもれている人を

照らしに来てください。

O Oriens,

splendor lucis aeternae,

et sol justitiae,

veni, et illumina

sedentes in tenebris

et umbra mortis.



22日

おお、

諸国民の待望の王、

神と人とを一つに合わせる

礎の石。

あなたが土から造られた人を

救いに来てください。

O Rex Gentium,

et desideratus earum,

lapisque angularis,

qui facis utraque unum:

veni, et salva hominem,

quem de limo formasti.



23日

おお、インマヌエル、

わたしたちとともにおられる王、立法者、

諸国の民の希望、

救い主、

わたしたちを助けに来てください。

O Emmanuel,

Rex et legifer noster,

expectatio gentium,

et salvator earum:

veni ad salvandum nos,

Domine, Deus noster.


聖母讃歌(antiphonae finales Beatae Mariae Virginis)

 カトリック教会では、教会の祈り(聖務日課)の一日の共同での祈りの締めくくりに、聖母讃歌が歌われてきました。聖母讃歌は四つがあり、第二バチカン公会議までは、教会暦の季節に合わせて歌われてきました。

救い主を育てた母(Alma redemptoris Mater)

救い主を育てた母

開かれた天の門

光輝く海の星

倒れる者に走り寄り

力づけてくださるかた

すべてのものが讃える中で

造り主を生んだ方

ガブリエルからことばを受けた

とわのおとめよ 祈りたまえ

われらのために祈りたまえ

待降節から主の奉献の祝日まで

(日本語聖歌は『典礼聖歌集』372)

Alma Redemptoris Mater,

quae pervia caeli porta manes,

et stella maris,

succurre cadenti,

surgere qui curat, populo:

tu quae genuisti, natura mirante,

tuum sanctum Genitorem,

Virgo prius ac posterius,

Gabrielis ab ore, sumens illud Ave,

peccatorum miserere.


天の元后 天の女王(Ave Regina caelorum)

天の元后

天の女王

世に光を生み出した

命の泉 天の門

喜べ おとめ 輝くおとめ

すべてに優る とうといおとめ

われらのためにキリストに

祈りたまえ 祈りたまえ

主の奉献の祝日から聖週間の水曜日まで

(日本語聖歌は『典礼聖歌集』373)

Ave regina caelorum

ave Domina angelorum

salve radix salve porta

ex qua mundo lux est orta

Gaude virgo gloriosa

super omnes speciosa

vale o valde decora

et pro nobis Christum exora


元后 あわれみの母(Salve Regina)

元后 あわれみの母

われらのいのち 喜び 希望。

旅路からあなたに叫ぶエバの子

なげきながら泣きながらも

涙の谷にあなたを慕う

われらのためにとりなすかた

あわれみの目をわれらに注ぎ

尊いあなたの子イエスを

旅路の果てに示してください。

おお、いつくしみ、恵みあふれる

喜びのおとめマリア

三位一体の主日から待降節に入る前日まで

(日本語聖歌は『典礼聖歌集』374)

Salve, Regina, Mater misericordiæ:

Vita, dulcedo, et spes nostra, salve.

Ad te clamamus, exsules filii Hevæ.

Ad te suspiramus, gementes et flentes

in hac lacrimarum valle.

Eia ergo, advocata nostra,

illos tuos misericordes oculos

ad nos converte.

Et Jesum, benedictum fructum ventris tui,

nobis post hoc exsilium ostende:

O clemens, O pia, O dulcis Virgo Maria.


天の元后 喜びたまえ(Regina caeli)

天の元后 喜びたまえ アレルヤ

あなたに宿られた方は アレルヤ

仰せのとおり復活された アレルヤ

われらのために祈りたまえ アレルヤ

復活祭から三位一体の主日前日まで

(日本語聖歌は『典礼聖歌集』375、376)

Regina cæli, lætare, alleluia:

Quia quem meruisti portare, alleluia,

Resurrexit, sicut dixit, alleluia,

Ora pro nobis Deum, alleluia.